2012年02月08日

問題はそこじゃない

中学と高校の体育で、柔道を含む武道が必修になるそうだ。
柔道も含め武道は、もちろん勝負の要素が大きいのは確かだが、それに劣らず「礼」も重視される。そういう意味では一人でも多くの子供がそういったものに触れる機会があるのは良いことだろう。
しかし、死亡事故が結構起きていているらしい。
後遺症の残るような怪我や死に至れば本人や保護者の苦痛は大きい。
「柔道事故被害者の会」によると、学校活動内ので死亡件数は、柔道絡みが突出しているのだそうだ。
http://judojiko.net/news/364.html

「柔道=危険」というステレオタイプが出来上がりつつあるようだが、中高で4年ほど柔道をやっていた者としては、そのステレオタイプ自体はちょっとどうかなぁ、と思う。
どんなものでもやり方が悪ければ悪い結果が出がちなもので、これもそういう一例だと思えるからだ。

頭を打ちやすい大外刈を禁止にするとか言っているらしいが、問題はそういうことじゃないだろう。

「柔道は安全なスポーツか?」と訊かれたら、まず「武道であってスポーツというのは微妙だ」というツッコミもあるが、やり方いかんによっては、他のスポーツよりずっと危険だし、ずっと安全だ。
どういうことか。
そもそも、相手を投げたり首や関節を締め上げたりするのが「技」として認められているのだから、素のままでは安全な筈はない。
だから本来、真っ当な指導が行われている場では、投げ技を教える前に、受身を徹底して叩き込む。怪我をしないために必要だからだ。また、自分の技で、自分自身や相手に怪我をさせないことについても日々厳しく指導される。
柔道をやっている人間なら「柔道は、よほど真剣にやらなければ怪我をする」ものだということは弁えている。
そういうことが徹底できていれば、柔道は寧ろ安全なはずだからだ。

柔道部では、入部して最初の何週間かは毎日受身の練習ばかりをやる。それは受身をしっかり体で覚えさせることのほかに、受身を取って頭を打たないようにするために必要な首の筋肉を鍛えることもある。それでもなお、投げ技の指導を受け初めの頃は、投げられて頭を打つこともあるが、段々に、危険な投げ方さえされなければちゃんと頭を打たなくなる。

・・・そういったものである柔道を、たかが週に何時間かしかない体育の授業の一部だけで、それも運が悪ければ柔道の十分な経験のないかもしれない体育の先生の指導で徹底出来るのかというと、これはとても厳しい。
私の場合、中高共に体育に柔道の授業があった(中学は柔道指導のモデル校に指定されていて、その関係で柔剣道場も整備されていた)。
今はどうなっているか知らないが、私が中高生のころの体育の先生というのは、少なくとも柔道三段を所持していた。柔道出身の先生なら問題ないが、そうでない先生の場合、講習会をちょろちょろっと受けて段位をもらってたそうだ。正直なところ、そういう先生の身のこなしは、生徒で柔道部員だった自分が見ても結構危なっかしかった。
柔道の世界では、初段以上が指導者、三段以上が師範ということになっているので、教師として柔道を指導するとなると、三段以上は持っていないと話にならない。それで柔道を指導しなければならなくなった体育教師には、便宜的に講習会受講で三段を授与してしまうということなのだが、これも間違いの元だと思う。
あと、レスリング経験者というのも危ない。私の知る限り、レスリング経験者やレスリング向きの人間は、柔道で人に怪我をさせることが多い(私もそういう教師に寝技で骨を折られた。瑕疵はその教師にあると認定され、その教師は以後柔道部を出入り禁止になった)。

色々とまとまりもなく書いたが、結局のところ、

 ・柔道を一人でも多くの子供が経験するのは、「礼」を学ぶ上でも良い事だ。
 ・ただ、それなりの稽古(特に受け身)と怪我をしないための種々の心得なくして
  乱取りなどをやらせるのは以ての外。
 ・柔道の最低限のことをやるには、体育の授業だけではとても不十分。
 ・ちゃんと柔道のことを知っている指導者がいなければ、柔道の指導は無理。
  柔道部出身じゃない教師と、柔道経験があってもレスリング経験のある教師には、
  真っ当な柔道の指導は出来ない。

ということに尽きる。以上がきちんとクリアされた場合、「柔道は危険だ」などという話は出てこないのではないか、と私は思う。
posted by D(各務) at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事
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