2008年07月23日

読了

「ピアノを弾く身体」(岡田暁生・監修/春秋社刊)

監修者を始め、著者等がこの本でやりたいことは、今までこの分野で余りとりあげられることのなかった、「身体論的音楽史研究」へ向けた「アウフタクト」ということになる。

実を言うと、読み終わったのは大分前なのだが、どう評価したものか、未だに定見がない。
理由は、幾つかの些細な点で、納得しかねる部分が幾つかあること、複数の執筆者がそれぞれテーマを掲げて各章を担当しているためか、本全体としては今一つ纏まりに欠ける印象が残ること、取り上げられた譜例の一部に余り感心しなかったこと(リースのピアノ協奏曲とか、スーザ=ホロヴィッツの《星条旗》など)、学問的な論述ではない章が殆どだったこと、そうは言いながら、個別には面白く読めた章が幾つかあること、等だ。

また、監修者が冒頭で挙げた「私が是非ともこの本を手にとってみていただきたいと願う」という読者に対して、方法論的な解答を示している訳ではないことも、期待外れだった。
但し第5章は、「音を止める」と言うことに関して、興味深い内容だった。シューマンの「蝶々」の終わりのほうに記されていると言う、奇妙な「音の止め方」を取り上げ、この「机上の空論」とつい切り捨てたくなるような指示が、意外にも実践的なものであることを、当時の楽器での実験を通して説明している。

先に触れたように、私個人は「方法論的な解答(の例示)」を期待していたところだったので、終盤でヴィルトゥオジティ(超絶技巧的名人芸といえば分かり易いか?)論に奔ってしまったのはどうなんだろうなぁ、と思った。
posted by D(各務) at 01:25| Comment(2) | TrackBack(0) |
この記事へのコメント
読んでみないと分かりませんが・・・ことパイのに限定した本に限り、なのか、最近の岡田さんがそうだからなのか、岡田さんの近著は、私はあんまり好感を持っていません。「バラの騎士」を巡ってお書きになったときの、切れの良さが、なにか不足して来た気がして・・・
Posted by ken at 2008年07月25日 23:21
Ken様>
この本は、ピアノ演奏をするにあたって「あぁ、あるある、そういうの。」的な話が現象論的に書かれている部分が多く、そういう意味では「ピアノ弾きにしか通じない話が多い」という一面がある思います。

岡田氏の本を読んだのはこれが初めてなので、正直なところ、余りよろしくない第一印象が残ってしまいました。
Posted by D at 2008年07月26日 01:26
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/17239069
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック